パトレイバー2での押井守「南雲は権威主義のファザコンで後藤のような人は選ばない」南雲の声優「もはや別人やんけ」

私は「南雲しのぶ」という女性が優秀な警察官であるという前提を踏まえて、
「これだから、女はなぁ〜」と言われることに神経を使っていても、もっと柔軟に対応できる人で、
どこかに遊び心を持ったしなやかな女性に成長してもらいたくて、
そのような役作りをしていたつもりでしたが、
このことは語って来なかったので、
誰にも伝わっていなかったのではないかと長い間ずっと考えていました。
（寄せていただいた多くのコメントを拝読していく中で、
私の役作りに気づいていてくれた方がたくさんいらっしゃることを知り、
今は、ホッとしています）
 
「パトレイバーMovie２」以前まで、私は、
当時の社会的背景等も考慮に入れ、
そういった南雲しのぶさんを作っていました。
 
が、「Movie２」の台本を頂き、押井守監督から「南雲しのぶはこういった人だ」と伝えられた時、
私の作って来た南雲しのぶとのギャップがあまりにも大きく、
同一人物として把握し演技に臨むにはどうすればいいのか、悩みました。
どうしても接点が見つからないのです。
 
押井守監督の説明は、
「南雲しのぶさんは、権威、つまり、優秀であることを重要視している。
父親はとても立派な人で、彼女はファーザーコンプレックスである。
母親のような生き方を軽視している。
そして、後藤喜一のような人は、選ばない」
とおっしゃいました。（
 
押井守監督が、それまでのパトレイバーを見ていないわけはありません。
私の南雲しのぶの役作りは、私の心の内側で、密かに、行われていただけでしたが、
私が全く語らなくても、押井守監督は聞き取っていたはずだ、と私は思いました。
それでも、「Movie２」で南雲しのぶさんをあのように描こうとしたのはどういうことなのだろう…。
 
「パトレイバーMovie２」
 
この作品は、押井守監督の強い思いが反映された作品だったと思います。
割と多くの人が、「南雲しのぶ」と「後藤喜一」が描かれている、
大人を主人公にしたアニメ映画と把握していると思いますが、
私の見方は異なっています。
もちろん、押井守監督に伺ってみなければ真偽のほどはわかりませんが、
押井監督は、
「南雲しのぶ」をストーリーに“絡める”ことによって、
「男」を「社会」を、近未来に起きるかもしれない「危機」を描きたかったのだと思います。
つまり、押井守監督の男性としての「思想」「哲学」が、
この映画の「主人公」だと私は思っています。
　
それまでの南雲しのぶさんとは別人と思える「Movie２での南雲しのぶ」を、
私はどう受け止めて良いかわかりませんでした。
そして、
「これまでのパトレイバーの作品と、Movie２は、まったく異なる作品だ」
と認識することで、
「Movie２の、新しい南雲しのぶさん」を作ることにしました。
 
そして、
当時、私は、それまでの自分の演技がとても嫌になっていました。
「演技して、見せている」という演技にしか思えず、この“見せている”が蛇足なのです。
この蛇足部分をどうすればなくすことができるのか…。
 
南雲しのぶの設定が変わってしまったことと、
それまでの自分の演技を変えたいという思いが、
この作品に臨む姿勢を決めていました。
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