「アニメや映画には王道のドラマツルギー（作劇術）が確立されている。だがゲームではそういった『文法』が解明されきっておらず、想像もつかない展開をする作品が存在する。
今やゲームは小説や映画と同様、物語を語るジャンルの一つと認知されていると思う」

「映像の観客は物語の傍観者だが、ゲームのプレーヤーは共犯者だ。物語の進行をプレーヤーに委ねる『選択』こそがゲームだと僕は考えていたが、
昨今のオープンワールド（操作上の制約が少なく、プレーヤーの自由な行動が可能なゲーム世界）の作品になると、もはや物語の分岐そのものがわからなくなっている。別世界を疑似体験させるところまで来た」

——物語の作り方が変わってきている？

「材料だけを振りまき、それをどうつなぎ合わせて解釈するかはプレーヤーに任せるというスタイルかもしれない。
ゲーム内でどんな戦いをし、どんな経験をしたかによって、プレーヤー自身がキャラクターの人物像を作り上げる。ゲーム体験は千差万別で、また固有だから、そこには無限の物語が生まれる」

——ゲームは現代文化をどう変えるだろうか。

「ハードの進化でゲームは次々に新しい刺激を提供していくだろう。また、今はゲームを自作する環境もある。個人が作った作品が一世を風靡することもあるだろう」

「映画監督が多額の予算で作品を作り、自分の世界観や思想を語る。僕はそういうものに親しんできたが、もう古い文化かもしれない。
ある時期から本や映画から離れ、自分の時間をほぼゲームに充てている。それだけ刺激的なジャンルであり、発想の宝庫だから」