引用元:【映画】 間もなく決定、アカデミー賞,「実在の人物」と「病気」は受賞に有利なのか?
■ 昨年のマコノヒーは「2大強力要素」を備えていた
まず、シンプルに熱演につながる役として挙げられるのが「難病」のキャラクターだ。
肉体的な病はもちろん、精神的に何かしら一線を超えたレベルのキャラクターは、それを表現するだけでインパクトは大きく、観客の心を揺さぶる。病ゆえの苦悩や、それを克服しようとする努力は、演技者にとって最高のチャレンジとなる。
もうひとつ、演技が評価される傾向が「実在の人物」だ。モデルが有名人であれば、本人とのソックリぶりを比較できるし、有名でなくとも、映画になるくらいの人物であれば当然、ドラマチックであり、常識を超えた波乱も用意される。
昨年『ダラス・バイヤーズクラブ』で主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒーは、「難病」と「実在人物」という2つの傾向をクリアしている。 そのマコノヒーを筆頭に、過去10年の主演男優賞を振り返ってみると、なんと、10人中7人が実在の人物! あえりえない高確率! ちなみに主演女優賞は10人中5人と、こちらもかなりの確率だ。
そこからさらに前の10年にさかのぼると、主演男優賞10人のうち、実在の人物はわずかに1人。主演女優賞も10人中2人なので、実在人物に賞がもたらされるのは、明らかに近年の「流行」だと言えそうだ。
いっぽうで「難病」の近年の確率は、意外に低い。過去10年の主演男優賞は先述のマコノヒーのみ。主演女優賞に至っては10人中ゼロである。どこまでを「病気」と言っていいのか。その定義自体、曖昧だが、一時、主演男優賞に病気の役が続いたことがあった。以下、その年代とタイトル、病名を列記する。
1996年『シャイン』 統合失調感情障害
1995年『リービング・ラスベガス』 重度のアルコール依存症
1994年『フォレスト・ガンプ/一期一会』 発達障害の可能性
1993年『フィラデルフィア』 エイズ
1992年『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』 視覚障害
そこから2年おいて(といっても、その2年も『羊たちの沈黙』『運命の逆転』と、かなり“異常”な役ではある)、
1989年『マイ・レフト・フット』 脳性麻痺
1988年『レインマン』 重度の自閉症
この時期の異例なまでの高確率が、難病モノ=アカデミー賞受賞という公式を、強く印象づけたのかもしれない。
逆に主演女優賞は、精神的疾患以外の肉体的「難病」は極端に少なく、この25年間では『ピアノ・レッスン』の聴覚障害くらいだ。
『ボーイズ・ドント・クライ』の性同一性障害を「病気」とするのは、もはや時代錯誤だし…。
■ 傾向に無関係のキートンVS.傾向ストレートのレッドメイン
そんな過去の傾向をふまえて、今年の受賞有力者を眺めてみよう。
まず主演男優賞は現在、最有力が『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートンだが、驚くことに、そのキートン以外の4人の候補者が、すべて実在人物を演じているのだ。
まさに「流行」まっしぐら!? 現在、キートンの対抗馬として追い上げているのが『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメイン。演じているのはホーキング博士で、「実在人物」と「難病(ALS/筋萎縮性側索硬化症)」という2大最強要素を兼ね備えている。
これは昨年のマシュー・マコノヒーと同じだが、実在人物でも「著名人」というオマケまで付いた。おおかたの予想どおり、マイケル・キートンの受賞は堅いが、
エディ・レッドメインが逆転勝利を果たせば、オスカーレースでの「傾向」を濃厚にする結果に! その意味で今年、最も興味深い部門と断言したい。
エディ・レッドメインのすばらしさは、ホーキング博士に起こる、ゆるやかな肉体の変調を。
綿密に再現した点にある。徐々に動かなくなっていく表情で、かろうじて意志を伝える姿は「テクニック」としての上級演技だ。
さらに、われわれが抱くホーキング博士のイメージと、寸分もブレることもない。つまり「技術点」では他の候補者を大きくリードしている。
そこにユーモアや、人間くさい屈折した面もまぶし、例年なら文句なしの、ぶっちぎり主演男優賞に値しただろう。
>>2以降に続く
http://bylines.news.yahoo.co.jp/saitohiroaki/20150209-00042900/
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かたや主演女優賞は、前哨戦の結果からほぼ確定的なのが、『アリスのままで』のジュリアン・ムーアだ。
彼女はこれで5回目のノミネート。いまだに無冠なので「そろそろ」という流れもある。ジュリアンの演じた役は、若年性アルツハイマーを患う。
50代に入ったばかりの大学教授アリスが、講義で言葉が出なくなったのをきっかけに、急速に病状が進む過程を本作は正面から描いていく。
ジュリアンのアプローチは、先のエディ・レッドメインと対照的で、あくまでもアリスの内面に向かう。いくつかのシーンで感情を大爆発させるものの、全体の演技のトーンは抑えめで、だからこそ観る者に、底知れぬ、いたたまれなさと恐怖を与えていく。
こえは、かなり高度な演技テクではないか? アリスの家族の目線も多少出てくるが、ほぼ全編、病と闘う主人公の心理を追う作りも「主演女優」という冠にぴったり。賞に「ふさわしい」ってことですね。
あえて主演女優賞の対抗を挙げるなら、『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイク、『サンドラの週末』のマリオン・コティヤールあたり。
よく考えると『ゴーン・ガール』のヒロインも、ちょっとだけ解離性同一性障害(多重人格)の気配があり、やはり今年のアカデミー賞主演賞は「実在人物」と「病気」がキーポイントになるのは間違いなさそう。
授賞式は現地時間の2月22日(日本は2月23日)。
アカデミー賞の「傾向」に注目しながら、賞の行方を見守ってみたい。
STILL ALICE
セント・オブ・ウーマンのアル・パチーノもそうだな。
やっぱそうゆうのあるんかね。
「実在の人物」と「病気」を演じてもトムクル、刑事プリオ、ジム・キャリーの
スルーされっぷりはかわいそうだな。
アカデミー会員に嫌われてるのかな。
受賞した暁には「もらっといてやる」と言っても許されるレベル。