引用元:【映画】<スピルバーグ監督>「もっと他人に関心を向けるべきだ」◇自己評価気にしすぎる人が増えた
インターネットのソーシャルメディアは、情報を発信したり他人とつながったりできるツールだが、逆に今は他人にどう映っているのか自己評価ばかりを気にする人が増えていると指摘。平和な世界に変えるためにも「もっと他人に関心を向けるべきだ」と訴えた。
◇自己評価気にしすぎる人が増えた
監督は、ソーシャルメディアの浸透は、人間を変えたとみる。画面ばかりを見て相手と視線を合わさなくなったことを嘆き「テクノロジーは心を開くのではなく、その柔軟性を失わせてしまった」と指摘した。
さらに監督は、ソーシャルメディアを使って他者に目を向けるのではなく、自己陶酔する人が増えたと感じている。「もっと他者の物語に心を配り、関心を向けるべきだ」と強調した。また「世界平和は自分自身が平穏であることで初めて望める」とも語った。
1970年代初頭にメガホンを取り始め「ジョーズ」や「E.T.」などのSF作品で評価を得た。その後はユダヤ人大虐殺を題材にした「シンドラーのリスト」(93年)など歴史をテーマにした作品も多く撮っている。「駆け出しのころから、もし成功したら世界を変えた出来事に基づく映画を撮る、と心に誓っていた」。今、世界で起きていることは、過去の出来事に関連している、と思うからだ。
85年に長男が生まれ、7人の子どもの父親となり、その思いは強まった。「世界は危険な場所だと考え始めた。子どもたちに安全な世界に生きてほしい。そのためには歴史を知ることが一つの方法かもしれない」
1月8日に日本で公開される新作「ブリッジ・オブ・スパイ」は、東西ドイツを隔てる「ベルリンの壁」があった時代に起きた米ソのスパイ交換の実話を基にした。トム・ハンクス演じる米国人弁護士が、イデオロギーを超え自身が弁護したソ連のスパイとソ連に捕らえられた米軍パイロットの交換に挑む物語。
冷戦はイデオロギーの戦争だった。イデオロギーは意見の異なる相手を悪魔化する。「相違を解決する方法として、お互いの間に橋を架けるのか、壁を築いて隔離するのか」。現代にもつながるこの問いに、橋の方が良い選択だと映画で伝えたかったという。
米ソの緊張が漂う中で監督は子ども時代を過ごした。「核戦争による大虐殺で冷戦が終わることを意識していた。私の両親はいつも、いかに危険な時代に生きているかを説いていた」と振り返る。
しかし、冷戦時代とは違い、今は世界で起きていることを予想できなくなっている。「かつては誰と戦っているか分かっていたが、今は敵の顔が見えない。誰が敵でどこにいるか分からないことが問題だ」と語る。
娯楽や商業目的を含めたサイバー・ハッキングや無人機による偵察--。「現代ほどスパイ行為が盛んな時代はない。無限に拡大している」と指摘する。
歴史ドラマを作る一方で、ポップコーン片手に観客を楽しませる娯楽作品も作り続けたいという。「私がいつも思っているのは人々を楽しませ、感動させ、考えさせたいということ。二つの異なるジャンルに魅了されている」と語った。
◇スティーブン・スピルバーグ◇
1946年、米オハイオ州生まれ。カリフォルニア州立大ロングビーチ校で映画を専攻し、テレビ映画「激突!」(72年)でデビュー。80年代後半からは第二次大戦中の上海が舞台の「太陽の帝国」(87年)や繰り返されるテロの不条理を描いた「ミュンヘン」(2005年)など、歴史をヒントに重厚な作品を送り出している。
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