＜君の名は。＞映画の舞台・飛騨発「聖地の酒」好評

　大ヒット中の映画「君の名は。」の舞台のモデルになった岐阜県飛騨市にある造り酒屋「渡辺酒造店」の新入社員２人が「聖地巡礼に沸く古里をもっと盛り上げたい」と、映画の場面を参考に日本酒「蓬莱　聖地の酒」を考案し、一時は品切れになるほどの人気を集めている。

　飛騨市生まれで、今年４月入社の井之口晴稀（いのくち・はるき）さん（１９）と下梶谷歩夢（したかじたに・あゆむ）さん（１９）は、公開翌日の８月２７日に富山市で一緒に映画を鑑賞した。主人公の高校生の宮水三葉（みつは）が飛騨弁を話し、地元そっくりの風景に心を動かされた。お米を噛（か）んで吐き出してから自然発酵させた口噛み酒を、もう一人の主人公の立花瀧（たき）が口にした直後の場面に涙がこぼれそうになった。「口噛み酒が出てきたので、造り酒屋として飛騨を盛り上げたい」「聖地巡礼に来た人に楽しんでほしい」と、映画にちなんだ酒の販売を思いついた。

　自分たちで考え、「聖地の酒」と名前をつけた。地元産の酒米「ひだほまれ」を原料にした純米吟醸酒で、ふくらみのあるうまみがある。映画に登場する「瓶子（へいし）」と呼ばれる容器に入れた。瓶子は岐阜県美濃市の美濃焼を使い、三葉と瀧を結びつけた真っ赤な組みひもに似せたひもを飾った。

　１１月２日、４２０ミリリットル入り３２４０円で発売した。直後に、１日だけで１２００本の注文が入り、容器がなくなって同１０日に販売を休止した。１２月１０日から販売を再開し、予定の３０００本は完売寸前で、追加販売を決めた。同社の渡辺隆専務（４２）は予想外の人気に驚き、「店頭にこれまで見たことない行列ができた日もあった。２人がファンの目線と感性で商品を開発したことが大きい」と言う。

　井之口さんは「聖地の酒を飲んで飛騨を好きになってほしい。入社１年目でいろんな人に喜んでもらえる仕事ができ、やりがいを感じる」と話し、下梶谷さんは「お店に若い人が目立ち、『飲みやすい』と言ってもらえてうれしかった」と喜ぶ。

　未成年の２人は２０１７年５月と９月にそれぞれ２０歳を迎え、「誕生日に最初に飲むお酒は、聖地の酒に決めています」と口をそろえる。【中村宰和】

毎日新聞 12/26(月) 12:30配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161226-00000029-mai-soci